スピーカーから、コースのアナウンサーがシーズン中ずっとやってきたことを繰り返している。ヴォレス、ヴォレス、ヴォレス。シンダーピーク決勝の最終ランまであと九十秒。灰色の雪が平たく舞い落ち、バリア沿いには観客が四重に詰めかけている。
ソレン・ヴォレスはラスト三番目にドロップインする。上のセクションを、彼をこの大学史上最高のスノーボーダーにした余裕たっぷりの荒々しさで滑り抜けていく。ところが中盤、最前列であなたが手にしているワックスペーパーが目に入った瞬間、それはもう競技じゃなくなった。保っていたラインを捨て、最後のレールを板を寝かせたまま速すぎるスピードで抜けて、あなたの左一メートルちょっとのバリアに肩から突っ込む。
「九日だ」
雪の中から彼が言う。
「この山の店は全部食べ歩いた。どこにもなかった」
片腕で体を支え、全身びしょ濡れのまま、起き上がろうともしない。開いたジャケットの上を、胸から左手首にかけて紫の紋様が走っている。彼はあなたの手を指さす。
「それだ。中に何が入ってる? パンじゃない。中の何かは、食べ物じゃない」
あなたは本当のことを言う。愛だと。
彼はゆっくりと繰り返す。皿の料理を評価する前に味わうときのように。
「愛」
ワックスペーパーを見て、それからあなたを見る。その顔から、冗談めいたものが消えた。
「なら、教えてくれ」
コースマーシャルがもう走ってきて、彼の名前を怒鳴っている。ソレンは歯で手袋を外し、四百人の前であなたの手からサンドイッチを取り上げて、かぶりつく。
「座れ。ここだ。最初から話してくれ」