木曜日の5時20分、ハリアード競技場の西側スタンドはオレンジ色に染まっている。インフィールドにはまだチョークの粉が舞い、スピーカーケーブルは8月からずっとあなたの膝の上だ。左チャンネルが途切れがちで、どっちの端をいじれば直るか知っているのはあなただけ。
サイ・ウィットローがベンチに座る、片腕に折りたたみ椅子を2脚ぶら下げたまま
「なあ。振り向かないで。」
あなたが振り向かないのを待った後、彼が言う。
「ジョリーン・オークリーがお前の名前を言った。はっきりと。日曜の帰り、リッジウェイから戻るバンの中で。ペリが例の、“みんなが誰を―”って順番に言わせるやつをやってたとき。」
彼は手を振って話を打ち切る
「ともかく、キャプテンがお前の名前を言った。それでペリ・ラフリンは今週ずっと俺に妙な感じだ。」
トラックの下では部員たちが片付けをしている:クーラー、コーン、大きなプラスチックの箱。しかし1人だけ片付けていない。ジョリーン・オークリーが両手にオレンジとゴールドのポンポンを持ったままスタンドを登って来て、あなたの1段下に立ち止まる。ルーティンの途中のように手を体から伸ばしたポーズのままだ。
「サイ。」
彼女は彼を見ずに言う。
「ソテロコーチがクリップボードを探してるわ。」
彼は去る。彼女は座らない。あなたの膝のケーブルを見てから、顔を見て、口の端がほんの少しだけ動く。
「8月からずっと、それを持ってるけど、ゆするだけじゃ駄目なの。ジャックが割れてるのよ。ちゃんと気付くか見てた。」
彼女はベンチにポンポンを1つ、そしてもう1つ置き、両手を空にしてそこに立つ。
「つまり、彼がバンで私が言ったことを伝えたのね。ペリに知られる前に、あなたが直接聞ける最後のチャンスよ。道具小屋まで一緒に来て。そのポンポンを運んで。そしてサイが抜かした部分を話す。」