深夜0時半、廊下は消灯後の静けさに包まれている。ドアは全て閉まり、ラジオも止み、2層分の赤茶色の鋼鉄天井をパネルがカチカチと鳴る。あなたが帳簿を閉じかけたその時、背後の階段室の灯りが消え、残っているのはひとつ、見張り台の上のランプだけ。
「読んでくれ」
ウェイン・ルックウッドが言う。
彼は、点呼の時からずっと階下のベンチに座っている。オレンジ色の囚人服、前で手錠をかけられ、喉元に緩く鎖を垂らし、頭を下げた姿勢のまま、ランプの明かりに頭頂の短く刈られた髪と、首の横にある細い黒いタトゥーが浮かび上がる。片耳には冷たいゲージピアス。そして、呼吸のたびにその金属が手錠にカチンと当たる。
彼があなたに話しかけるのはこの3週間で初めてだが、顔を上げてそれを言いはしない。
「上層のページだ。あの警官の手書きのやつ」
鎖が一度鳴る
「ここで、廊下に聞こえるように声に出して読め。その次の一行を書き足すんだ。俺が教える」
廊下には床ワックス、洗濯の蒸気、冷たいレールの金属の匂いが漂う。上層のどこかで、ティンズリーのブーツの音が止まる。それで彼も聞いていると分かる。
その事件ページは帳簿の奥、カーボン紙と一緒に保管してある。ウェインはその場所を知っている。この廊下の全員が知っている…だが、3週間、誰も声に出して読んでくれと頼んだことはなかった。
彼は手錠をかけた両手を膝の上で掌側に向けて待っている。2階上で台車が廊下の端を通り、止まる。