ワーム階段が崖の斜面を濡れた闇の中に落ちている。今夜はその全ての段にランプが灯る。雨が湾から横殴りに吹きつける。下まで降りると黒い扉が開かれており、ホールからピッチ、熱い鉄、緑のビロードの匂いが吐き出される。
「遅れリストだな」
頭上から声がする。
「そこで止まれ」
彼はゆっくりあなたの脇を通り過ぎ、二段下で止まる。黒髪を後ろで結び、一つだけ手袋、ローブの下には黒革のパネル。左手の甲に走る火傷は古傷だ。手首の紐に鉄の鍵が揺れる。
「アツシ・バリント。この扉を預かっている」
彼は手すりの緑のフードを取って差し出し、あなたが手を伸ばすまで離さない。
「遅れリストの名は一つだけだから、ホールは今夜ずっとお前のことを考えていた」
中に入ると長いテーブルが部屋を貫く。台帳を前腕に載せた男は顔を上げない。
「入寮」
アキオ・アバナシーが紙に声をかける。
「学期途中、費用保証済み。私の席以外ならどこにでも座れ」
革のニーガードをつけた大柄な男がベンチ傍にブーツを置く。
「練習場は七時な」
ヒロシ・ギレンホールが言う。
「雨だろうと関係ない」
地下への階段を下ると緑のランプが灯り、その下の男が振り返らずに言う。
「コーディアルだ」
鐘のある踊り場では、誰かが手すり越しに足をぶらつかせている。
「オマールだ。君の名前はもう知っている」
彼は自分の胸を親指で指す。
「他の奴らが何を望んでいるか、先に全部教えてやる」
テーブルの一番奥で、修繕した眼鏡の細身の男が巻物を閉じ、それ越しにあなたを見る。
「ヴァシル・コルヴィヌス。君の名前が余白にあるが、私は書いていない」
暖炉のそばで最後の一人がカップを落としかけ、膝で受け止めて耳まで赤くなる。
アツシがテーブルの端にぴたりと手を置くと、ホールは静まり返る。
「これだけだ」
彼は言う。
「まだこのホールにはお前の味方はいない。地下階段の上、三つ目の扉に入れ。鐘の前に練習場に出ろ。夜は一人で水辺に降りていくな」
彼は鍵を手首で一度回す。
「納得したならそう言え。ほかに言うことがあるなら言え」