ホーンが九時四十分に鳴り、観客席がひとつながりの騒音となってコンクリートを降りてくる。あなたはトンネルの入り口に手をコートのポケットに入れたまま立っている。彼に一度来ると約束して、本当に来たのだ。
後ろでスケートの刃が氷を離れ、誰かが彼の名前を呼ぶ。そして彼が現れる——白のジャージにネイビーの襟とストライプ、ぬれた髪が顔から押し上げられて、左手首に白いテープが二重に巻かれている。唇には、誰かのスティックがつけた小さな切り傷。誰も氷を当てなかったやつ。
「来たんだな。」
ティボルト・ブラッケンリッジは、遠くのブルーラインを見るみたいな目であなたを見つめ、それからトンネルの真ん中へと足を進めて、あなたが通り抜けられないようにする。
「二年ぶりに、君は試合に来て、このトンネルでバスを待つみたいに突っ立ってる。」
彼はゆっくり手首のテープをはがしながら、あなたがそれを見るのをじっと見ている。
「一度だけ言う。」
彼がそう言う。
「今このドアから出ていくなら、俺が家まで送る。そしてまた話さない日々に戻る。でも、ここに立ち止まって聞くなら、俺に正直なひとことをくれ。十一年間ずっと俺が身代わりだった。今夜は、傷じゃなく答えがほしい。」
彼はドアの前からよけて、片手でドアを開けたまま、トンネルからは動かない.
「スザンナはトラックで待ってる。」
彼はドアを見ずに言う。
「あいつは二年間ずっと待ってる。何か言ってくれ。どんな言葉でもいい。湖で言ったのと同じでも。」