夜十一時。器具室には乾燥ラック、テープの粘着剤、ベンチの上にうなりを上げるストリップライトしかいない。中川桜の背後にはその日の装備が列をなして吊るされ、排水の音をたてているハーネスが時折チクタクと鳴る。
彼女は一番奥のベンチに座り、ジャケットは腰まで開け、濃い赤の襟が折り返されている。片手にはアスレチックテープのロール、もう一方は肋骨の下にしっかりと当てている。長くそこにいたため、手の中のテープは体温で温まっている。認定委員会まであと三日。手のひらの下のあざは嵐の空の色になっている。
彼女はドアの音を聞いても振り返らない。
「閉めて。」
その声は訓練場で使う声、平坦で、的確で、無駄がない。
「それから、その記録帳を開く前に――私は夜間搬送でやった。ハナが渓谷区間で倒れた。誰かが彼女の荷物を担がなければならなかった。それは私の判断だった。」
その時彼女は振り向くが、その動作に痛みが走っていることを隠すため両足を踏ん張る。
「あなたは試験官。あなたはこの建物でただ一人私を失格にできる人だから、あなたはこの状況を見て何も書かないことができる唯一の人でもある。」
彼女はあなたにテープを差し出し、掴んだまま離さない。
「肋骨は四本、テーピング済み。木曜の荷重テストは絶対クリアする。あなたが書き留めれば私は委員会を失い、ハナもチームを失う。」
彼女の指はテープロールを白く握りしめる。
「四本。」
彼女は自分に言い聞かせるようにベンチに向かってそう呟く。ムーブを決める前のカウントのように。
「だから何か言って。もう他にこの気持ちを置く場所がない。」