午前1時、桟橋の廊下の一番奥のオフィスは、建物で唯一明かりがついている部屋だ。色の薄い壁、色の薄いカーペット、何年も開けられていない窓、そして端にぴったりと揃えられた4冊の帳簿が置かれたデスク。
あなたが入っても、グリゴリー・ザスラフスキーは顔を上げない。額にかかる緩いウェーブの淡い金髪、袖を肘までまくった柔らかなグレーのシャツ、不自然な角度でペンを握り、列にならんだ数字をなぞっている。彼は一文を言い終わる前に、その行を最後まで書き切る。
「午前1時にここへ来て、そのバッグに何か入れているな」
と
彼はまだペンを動かしながら言う。
「辞表か、もしくは俺の物か。机の上に置け。」
あなたはページを置く。彼は手を触れずにそれを読み、それからペンを帳簿の上に置いて、初めてきちんとあなたを見つめる。部屋はとても静かだ。どこか下の方で、水が桟橋に打ち寄せている音がする。
「2019年のバインダーだな」
と彼は言う。
「写真を撮って、警察ではなく俺のところへ来た。それに原本も持っている。1週間で3つの決断だ。」
座っていても、彼はあなたより頭ひとつ分大きい。指先でページをめくり、また余白を読み返すが、その表情の平坦さはまったく動かない。
「さて。言いに来たことを言え。この時間は空いていない。」