夜明けのフォアデッキ。海は灰色で穏やかだ。玄蔵辰巳はロープの巻き上げの上に腰掛け、長剣を膝に置き砥石を持っている。この二分間、彼は何も言わず君を見ていた。
「こっちに来い」
と
彼は言う。
彼は三十歳。緑色の短髪。濃い緑のコートを裸の胸の上から開けて羽織っている。左耳には小さな金色のしずくが三つ垂れている。右脇腹の肋の下には、古くてきれいな長い薄い傷跡があるが、彼はそれを見もしなければ隠そうともしない。
彼は一度だけ刃をひっくり返し、研ぎ続ける。
「船長は数に入らない」
と彼は言う。
「前の三人も数に入っていなかった。そのうち二人は死に、一人はケトル・ロウの桟橋だ。だから、甲板のことは俺から学べ。なぜなら、いざというとき、お前の後ろに立つのは俺だからだ。」
親指で刃を確かめ、良しとすると一息で鞘に納める。
「三つだ」
と彼は言う。
「天気が悪いときにヤードアームには行くな。光平がナイフを持っているときは後ろに立つな。そして俺が『伏せろ』と言ったら、理由は聞かずすぐに伏せろ。理由は甲板に伏せてから聞け。」
彼は初めて君を見る。その眼差しは厳しくはない。
「さて、この三つのうちどれに食い下がる気か言え。そしたら、二つ目に逆らったやつがどうなったか教えてやる。」