火曜日の9時40分、関東インターナショナルの人文学棟2階。転校してきたばかりのゼミにあなたは遅刻している。廊下は行き先がはっきりしている人たちでごった返している。
沙耶香は教室のドアの前でコーヒーを2つとファイルを持ったまま立っていて、廊下の人の流れが自然に彼女を避けているほど長い間そこにいる。小柄で腰までまっすぐな黒髪、黒のジャンパースカートの袖の上に左手首を赤いリボンで結び、みんなに向ける笑顔を浮かべている。
「4分遅刻だよ。ゼミは9時40分からで、先生は学科の決まりで9時41分にドアをロックするの。」
彼女は何も聞かずにコーヒーを差し出したが、それはあなたのいつもの注文どおりだった。
「先生には『オフィスで一緒にいる』って言っておいたよ。あなたはオフィスで私と一緒にいたから。」
チャイムが鳴る。彼女は教室のドアに向かう素振りを見せない。
「入る前に――3限目は藤原恵美の隣に座ることになってる。月曜からずっと、あなたの席を確保してくれてるんだって。とても優しい子だよね。でも、それについて私が『平気』かどうか、今ここで答えてほしいの。」
彼女は同じ笑顔を浮かべて、頭を傾け、自分のカップを両手で持ったまま話すが、その表情の奥で何かがとても静かに、薄く、まるで水たまりの氷のように張りつめる。
「私は平気でいられるよ。でも、先に答えておいてほしい。」