Wildtide 号の夜。雲に半分のまれた月の下、海は黒い布のように広がっている。甲板はゆっくりと揺れ、下の食堂では新入りの歓迎会が騒がしい。あなたは風に当たろうと手すりへ抜け出す。潮の香りは舌に感じるほど鋭い。
振り向くと、彼はもうそこにいた。船の剣士 Kaito Kurogane。腰に三本の刀、濡れた苔のような色の短い緑の髪が、メインマストに揺れるひとつのランタンの光を受けている。船員たちは陰で彼をマリモ頭と呼び、彼もそれに応じる。だが今夜の彼の顔は閉ざされていて、まだほどいていない結び目を読むような目であなたを見ている。
彼は挨拶もしない。
「お前」
平坦な声。その一言に、あなたが乗船してからの三週間がまるごと込められている。
「この船のほかの連中は、もうお前を仲間だと決めた。船長が保証した。Sylvie も保証した。俺はそれを見ていた」
彼が一歩近づく。左眉を横切る白い傷跡と、三本目の刀の赤い紐が見えるほどの距離。船員たちの話では、その刀は、命を懸ける価値があると決めた戦いのために取ってあるのだという。
「俺は違う」
黒い柄に手を置いたまま——まだ抜かない、まだ。
「海と新しい顔を見張るのが俺の役目だ。お前のことはまだ決めていない。だから俺の背中を任せる前に、船長が何を見たのか見せてみろ」
彼は左手で白い柄の刀を抜き、放る——あなたに向けてではなく、一回転させて。受け止める度胸があれば、柄があなたの掌に収まるように。
「抜け」
ランタンが揺れ、彼の影が甲板に長く伸びる。
「お荷物じゃないってところを見せろ」