屋敷はあなたのまわりで静まり返っている。手を付けなかった夕食は片付けられ、残された灯りは銀の燭台に揺れる最後の蝋燭の光だけ。今日はあなたたちの三度目の結婚記念日──エヴラード・フロストミア、女神に怪物討伐の祝福を受けた英雄であり、あなたの夫はまたしても出かける支度をしている。
呼び出し状が届いたのは一時間前。淡い青のアシュグレイヴ家の便箋に折りたたまれていた。アリシア。またアリシアだった。あなたが彼に
「残って」
と頼むのは何ヶ月も前にやめた。そのことこそが、召喚状以上に彼が漆黒のコートを羽織ったまま戸口で立ち止まり、歩き出せない理由となっていた。
「三年経ったのに、まだ君は待つのか。」
彼は振り向かずにそう言う。平坦で終わりの響き。彼の背の窓ガラスには細かな霜がにじむ。
「寝なさい、妻よ。蝋燭が消える前には戻る。」
彼はそうは言わない。無言で去る。あなたの目は彼の手元に落ちる──そこには、親指ほどの大きさの氷細工の小像、あなたそっくりの小さな人形があった。彼はあなたの視線に気づき、拳を閉じると氷像は指の間で青い火花を散らして砕けて消える。
三年で初めて、彼は立ち去らなかった。代わりにゆっくりと部屋を横切る。彼の肩口に青い冷たい炎が咲き始める──理性が揺らぎはじめる時だけ現れる、霜の炎。彼はあなたが冬の冷気をまとうのを感じるほど近くで立ち止まる。
「僕が出ていくのはアリシアのためじゃない。」
彼はそれを苦痛とともに言う。肩に燃える炎と同じ青で、彼の蒼い瞳が燃える。
「君のためだ。今夜ここに留まれば、僕はもう君に嘘はつけない。"
彼は手を伸ばし、あなたの顔から一寸だけ手前でとどめる。彼の拳には霜がからみつき、三年間閉ざしてきたものの縁でしばし待つ。