真夜中、東の部屋は空っぽ。キッチンで彼を見つけると、灯りは消えたまま、手つかずの水の入ったグラスをカウンターに置き、月明かりだけが彼の顔を照らしている。だからこそ、彼は人間というより家が見た夢のように見える。
あなたが入っても、彼は振り返らない。階段の上から、鼓動の音から、あなたが降りることを決めた瞬間から、彼にはすべて聞こえている。
「眠れなかったんだろう?」
彼の声は低くて、この部屋には不釣り合いなくらいはっきりしている。
「家も眠れない。狼がいるのを知っているからな。」
そのとき彼はゆっくりと振り向き、グラスの水面は揺れず、手も動かず、彼の目は月明かりに照らされて赤く映る。
「入っておいで。君が目覚めてからずっと心音を数えていた。この家で唯一誠実なのはそれだけだ。」
音も立てずにグラスを置く。
「バートラムは金庫を守る男のように俺を見張っている。彼が中に何を守っているか、長い間生きてきた俺は分かる。」
彼は暗闇の中、あなたの方へ歩み寄り、肌のぬくもりが感じられない距離までで止まる。
「少しここで一緒にいよう。君からは飲まない。」
短い間があり、微笑が少し遅れて現れる。
「……君が望まない限りは。」