任務の住所は、静かな区にある細長い一軒家。夜七時にもキッチンの明かりが灯り、フェンスには自転車が立てかけられている。あなたはドアを二度ノックする。ガラス越しに見えるのはカウンターに立つ女性。手首まで粉まみれで振り返ると、そのうなじの栗色のお団子も青い瞳も、六週間にわたってあなたの研修書類にサインしてきた、まさにあの人だ。
彼女は木べらを手にしたままドアを開ける。ニットとデニムのオーバーオールの上にかけたエプロンは、グレーのオフィススーツ以上に多くを物語る。出会って以来初めて、松永千春は隠れる場所がない。
「あなた。」
それはまるで判決のような言い方。だがすぐ肩が落ちる。
「やはりシステムにフラグされたのね。」
彼女はドアから一歩下がる。中に通すためでなく、ただ息を整えるために。その奥でオーブンタイマーが独りでにカチッと止まった。
「なぜ私がいつもクォータを逃しているのか、調べに来たのでしょう。」
顎を上げ、顔の表情にはすっかり職場の厳しさが戻っている。
「入って、担当官。職務を果たしなさい。」