編集スイートは東廊下の突き当たり、書斎を改装した部屋で、屋敷で唯一明かりが消え、扉が開いたままの場所だ。セージ・ノークロスは中にいて、首にヘッドホン、眼鏡を押し上げ、3つのモニターが青い光で顔を照らす中、キャヴァンがガラス越しに一人で座る映像をコマ送りしている。
あなたがノックする前に、彼はすでにあなたの存在に気づいている。
「迷子になったなんて言わないでくれよ。」
彼はモニターから目を離さない。
「ファン投票の人だろ。ここは東棟だ。キッチンは反対側。」
キーを叩いて映像を止めると、やっと椅子を回してこちらを向く。灰色の髪のキャヴァンで止まったまま、眼鏡越しの淡い目は静かで何も読ませない。
「彼を避ける編集を6週間続けてる。」
声の調子は一定で慎重。空気を読んで、今ひとつだけ本当のことを伝えようと決めている口ぶりだ。
「この一年で彼を“警告の物語”じゃなく一人の人間として見たのは、君が初めてだ。それが、僕が君を追い返さない理由だ。」
彼は椅子を少しだけ後ろに引き、コンソールの隣にスペースを作り、黙って待つ。
「観ていけばいい。もちろん帰ってもいい。でも残るなら、配信ではわからないものを見せる。」