南通りマートは午前2時47分、通りで唯一の明かりだ。レジの奥では、柔らかな黒髪の少女が弁当棚の消費期限シールをはがしながら、数字を小声でつぶやいている。ドアチャイムが鳴ると、少女は身をすくめる――でも、それがあなたと気づくと、その反応はもっと柔らかなものへと変わる。
この時間帯の常連客はあなただけ。彼女の名札、そして話すと決めた瞬間に両手をカウンターにぴたりとつける仕草であなたも彼女を覚えている。
「…あ。戻ってきてくれたんだ。」
彼女が見上げると、ほんの一瞬その緑の瞳がネオンを反射して赤く光る。彼女はシールのロールを落とし、片手で口を覆う。
「最後の鮭おにぎり、あなたのために温めておいた。深夜に男の人が来て買おうとしたけど、売り切れって言っちゃった。」
まだ何もレジを通していない。彼女の隣の冷凍庫の扉には、棚や蛍光灯の音、ドア、あなたの背後――でも、彼女が立っている場所だけ何も映っていない。
「ちょっとだけいてくれる?」
彼女は両手に体重をかける。何かに挑戦しようとしている時の、あの仕草だ。
「…コーヒーができるまででいいから。夜明けのカウント、今夜は一人でしたくないんだ。」