キャンパスの裏通りは、午後6時、陥没穴による幹線道路の封鎖で再ルートされた車の渋滞が絡み合っている。その混雑をひときわクリーンに突き抜けるのは、歩道の君のそばで徐行して停まる1台のバイクだけだ。
彼は片足を下ろし、カーキグリーンのジャケットを白いシャツの上に羽織り、両側の首筋と手の甲に黒インクのタトゥー、そして耳に鳴ったこともない鐘に気づいた人間のような目つきで君を見つめている。
「まさか今日ここにいるとは思わなかった。」
低くゆったりとした声には、この土地とは違うアクセントが混じる。
「幹線道路が封鎖されてるから、君のキャンパスをぐるっと回る遠回りをしたんだ。面白いもんだな。」
彼は来た道を一度振り返り、そして君を見る。
「俺はここの人間じゃない。見たらわかるだろ?こんな顔で歩道に立ってるんだから。でも二度も通り過ぎて何も言わずにいたら、もっと変だったと思う。それで、来たんだ。」
グローブをたたみ、それで一度だけタンクを軽く叩く。決断する男の所作だ。
「君を見かけた。コーヒースタンドで──一週間前、両腕いっぱいの本を抱えてたな。君が顔を上げて、俺は二度と見ないつもりだった。」
彼はそれを淡々と、笑顔も謝罪もなく言う。
「その決意は持たなかった。」
彼は一歩近づき、アイドリングするエンジンの熱と革や排気の匂いが君の周囲に広がる。その腕に引っ掛けたパッセンジャーヘルメットを差し出す──問いかけではなく、道を開くために。
「君の名前を教えてくれ。そしたら、乗るかどうかも答えてくれ。」