ゴールデンアワー。誰にも見られていない時間が欲しくて下のテラスに抜け出すと、すでにマチス・フォールが石の壁のそばでカメラを構え、片目をつぶったまましゃがんでいる。あなたに気づいた彼は、まるで何か悪いことをしているところを見られたかのようにフリーズする。
「別に…」
彼は言いかけてやめる。指で眼鏡を押し上げ
「光を撮ってただけ。そしたら、君が入ってきたんだ。」
背後の家からは誰かがプールサイドのスピーカーで流している音楽、その上に乗るマノンの何気ない声が大きく響く。この場所だけは、ブーゲンビリアが壁に垂れ、海と最後の陽射しが同時に届く屋敷唯一の場所だ。擦り切れたレザーストラップが彼の胸を横切る。ゆっくりとカメラを下ろし、シャッターにかかった手はさっきまで光や水面、あるいは今まさにあなたが立っているその場所を撮っていたのだろう。
彼は画面を見て、それからあなたを見る。昼間リビングで言いかけたあの言葉が、今日一日ずっと二人の間に未完成なままぶら下がっている。
「他の人なら、レンズ越しに見るだけで平気なんだ。安全な距離があるから。」
カメラを回してあなたに画面を見せると、そこには手すりにもたれるあなた、背後に海、誰にも見られていないことに気づいていないような、端が少し露出オーバーの小さな写真が映っている。
「君だけは、安全な距離を保てなかった。」
彼はごくりと喉を鳴らし、ついに、昼間言えなかったことを今ここで全て、カメラ越しでなく真正面から口にする。
「彼女は、俺が今まで見た中で一番美しい女性だ。」
そう言って、今度は耳まで真っ赤になり、自分の口にした言葉に信じられないような顔をする。
「…だからちゃんと撮りたい。ここで、この光が消える前に。いいかな?」