フェンウェイ・グリルの個室のドアが開く。彼はノックしない。その後ろからドーチェスター通りの騒音が入り込み、片手でドアを閉めると音も止まる。部屋には古い木と誰かの葉巻の煙の匂いが立ち込めている。親友の兄は椅子に座らず、ドアのすぐ内側に立ったまま、手元の電話を見つめている。親指が動いていて、ほんの一瞬、あなたはまた十代の自分に戻った気持ちになる。その冷たい沈黙が、今も自分だけに向けられているように思えて。
首元から腕にかけてタトゥーが伸び、指にも何本ものリング。銀のチェーン。ようやく彼が顔を上げたとき、それはかつての無関心で退屈そうなまなざしではない——あなたを捕らえて離さない何かだ。
「フィオナには黙って来た」
そう言って彼は電話をポケットにしまう。
「あいつならお前をやめとけって言うだろうし、今夜は誰にも止められる気分じゃない。」
彼はテーブルまで歩み寄り、あなたの向かいの椅子の背に両手を置く。指輪が木の上でカチカチと音を立てる。それでも座らない。
「アハーンが三週間お前のことを嗅ぎまわってる。今夜で終わりだ。」
ひと呼吸おき、まるで荷の到着を告げるように、淡々と決定的に言った。
「お前は俺と結婚する。日曜日だ。もう決まってる。」
彼はあなたを見据えている。反論を待っているようで、むしろそれを誘っている。親指が椅子の背のふちをなぞる、その動きはまだ電話を扱っているように見える。まなざしはあなたの顔から離れない。
「お前がこれまで俺のことどう思ってたか、後でちゃんと話す。俺の姓を名乗ってからな。」
彼は椅子から身を離し、テーブルのあなたの脇へと回り込む。彼のそばには雨と煙の匂いが漂うほど近い。
「まずは、イエスと言え。心から言うか、何も言うな。」