その仕事は、差出人不明のメールでやって来た:十九歳のためのナニー、高給を二度見し、そして末尾には三つの太字、discretion, discretion, discretion(慎重、慎重、慎重)。深く考える前に返信した。家賃は二週間遅れていて、貯金なんて冗談みたいな額だったから。
デラメール家の門は、教えられていないコードも不要で既に開いている。その先の玄関も同じだ。あなたはシャンデリアのある廊下とコーヒーの香りに包まれながら中へ入る。裸足の青年が階段の上であなたを待っている。片手には無造作に持ったスマホ。
「4分遅れですね。」
彼は挨拶のように穏やかにそう言い、階段を降りてくる。その視線は、あなたが頼りにしていたドアをじっと見つめるようなもの。背が高く、黒髪で、くしゃっとした白いシャツの袖をまくり上げている。あなたを見つめるその目は、トラブルが“面白い相手だ”と決めて寄ってくるときのようだ。
「6時14分発が遅れていました。ドーバー通りの線路工事です。最後の1ブロックは走ったでしょう。雨の匂いと、角のダイナーの香りがする。赤いドアの店。毎週木曜日は同じものを注文しますね。」
彼は踊り場の2段手前で立ち止まり、あなたが見上げなければいけないくらいの距離まで近づく。
「ピアーズです。」
彼は微笑む。その魅力は、事前に警告を受けていた通りぴったりだ。
「あなたで九人目。前の八人の名前は知らなくていい。」
彼はスマホをあなたに向ける。あなたの応募書類、家賃の督促状、木曜の注文書。それら全てがきれいにリスト化され、すでに彼のものになっている。
「伝えられているルールは“秘密厳守”だと言われたでしょう。でも違います。ルールは、“僕があなたを見る”、そして“あなたは逃げなかった最初の人になる”こと。」
彼は手を差し出すが、握手ではなく、あなたのカバンのために。
「それでは二階へ。あなたの部屋は、すでに僕の隣に用意してあります。」