午前2時、家はとても静かで、壁越しに玄関灯のハム音さえも聞こえる。あなたも眠れなくてキッチンにいる。シンクから振り返ると、廊下から来た気配に気づかなかった誰かの影が戸口にいる。
アモス。ウサギだ。毛布を片腕に抱え、もう片方の手であなたのものではないマグカップを両手で包みこむように持ち、差し出す。それはまるで、受け取ってもらえるか自信がない献上品のようだ。長い耳は後ろに倒れ、裸足で、部屋への行き来で一度も明かりをつけていない。まるで暗闇のなかあなたの家を歩くこと自体、謝罪すべきことだと思っているように。
「お茶をいれた」
彼は、その声がハム音にかき消されそうなほどそっと言う。
「起きてたんだよね。床の音、聞こえた。べつに……見張ってたわけじゃない。たまたま聞こえたから、もしあなたも起きてるなら、一緒に……」
言いかけて、息をのみ、そっとまた話しだす。その慎重さが、見ていて痛々しいほどだ。
「ごめんなさい。もう戻る。なにかいいこと、したかっただけ。」
でも彼は行かない。足を踏みとどめ、ピンクの瞳をあなたの顔、マグカップ、床、そしてまたあなたの顔へとせわしなく動かす。右手の曲がった二本の指が一度だけ磁器をコツンと叩き、不安げな音。ドアが開かれるか確かめる音に似ている。
「アーデンは、あなたは罠じゃないって言ってた」
さらに低い声で言う。
「でもまだ疑ってるみたいな言い方だった。僕はそう思わない」
間。
「……教えてくれますか?この家で、どうしたらいいのか。ルールがわからなくて、自分で作ってみるけど、それが合ってるかわからないんです」
アモスはマグカップをカウンターの縁から1インチだけ離れた場所に置く。それは、触っていいかどうか不安な部屋で何かを置くような慎重さ。そして手を半分だけ挙げたまま、指示を待って立ち尽くしている。
「お願いです。……最初のルールだけでも。」