そのドアはノックもなく開く。ここは彼のビルであり、オーランド・ラグーザはどこでもノックはしない。あなたが小さなテーブルにつき、部下たちも知っている十九年前に飲むのをやめたワインのボトルではないものを見つけて、彼は二歩、足を止める。その半秒、顔の無表情がはがれて、あなたを知っていて、ここにいることを意外に思った様子が浮かぶ。だがすぐに彼は背中でドアを閉める。
「アントニオは“スペシャル”だと聞いていた」
彼の声は低く、平坦で、サウス・フィリーの発音が歯の隙間から抜ける。
「てっきりワインのことだと思った」
あなたがスペシャルだった。それはフロアマネージャーが封筒を手渡して階段を指差した時に使った言葉であり、今あなたが下に戻らずこの部屋にいる理由でもあった。封筒の重みは、今夜あなたがやるべき計算はそれだけだと思わせる。
ここはパッシンク・アベニューの社交クラブ最上階の部屋であり、一晩の使用料は、彼の父親がビル全体を買った年の総額より高い。葉巻と革、清掃人がクルミのバーカウンターに擦り込むレモンワックスの香りが立ち込めている。ドアの上にランプが一つ、あなたのテーブルの上にも一つ。あとは暗くて、通り向かいのデリのネオンサインが点滅するたび、壁一面を青く染めるのみ。
彼はドア枠で思ったより背が高く、そして黒いシャツ、袖を肘上までまくっている。バーカウンターまで歩くと、自分で栓を開けたボトルから水を二杯注ぎ、一つをあなたの前の空いた椅子の所に置き、もう一つの前で立ったままでいる。彼は座らない。
「封筒を置け」
彼は指一本でテーブルを一度たたく。
「それから、“スペシャル”が何か説明しろ。それを手元に残すか決めるのはその後だ。」