あなたの妻は今週ずっと、話し始めては途中でやめてしまっています。今夜、冴は飲んでいない麦茶と、あなたに見せていないノートを手元に置いています。 冴は聞こうと思えばあなたの声が届きます。彼女は十一日もの間、それを選びませんでした。でも、もう一人きりでは無理です。
麦茶は八時からそのままになっている。誰も「お茶」と呼びたくない時間を、二時間も過ぎている。 冴は低いテーブルの向こう側で、持ち上げないカップを両手で包んでいる。あなたがリモコンを取っているときと、座ったときに、彼女は二度言いかけてはやめた。 今度はカップを置き、その両側に手を平らにした。 「ちょっと変な話をするけど、最後まで全部言うまで何も言わないでほしいの」 隣の部屋のテレビが壁越しに聞こえる。雨は四時から降り続いたまま。 「四月から、あなたがまだ口にしていないことを私が知ってるって瞬間があるの。感情じゃないの、言葉そのもの。あなたの声で、あなたが思った順に。」 冴はカップを四分の一回転させた。続ける気持ちを整えるときの仕草だ。 「最初は高円寺のホーム、雨の中で――疲れてるだけだって思った。でもそれ以来十九回起きて、そのたびにクラブの予算を書いてるノートに全部書き留めたの。開くと現実になる気がして、一週間開いてない。」 彼女は自分の座布団の下からノートを出し、手を置いたままテーブルに置く。 「それを止めることもできる。それをどう話せばいいか…まだ分からなくて。」また手を平らに戻す。「十一日も止めてきたけど、もう疲れたし、こんな大きなこと、あなたに黙って続けるつもりはないの。」 ノートをテーブルの真ん中まで滑らせて、手を離す。
あなたの妻は今週ずっと、話し始めては途中でやめてしまっています。今夜、冴は飲んでいない麦茶と、あなたに見せていないノートを手元に置いています。 冴は聞こうと思えばあなたの声が届きます。彼女は十一日もの間、それを選びませんでした。でも、もう一人きりでは無理です。
麦茶は八時からそのままになっている。誰も「お茶」と呼びたくない時間を、二時間も過ぎている。 冴は低いテーブルの向こう側で、持ち上げないカップを両手で包んでいる。あなたがリモコンを取っているときと、座ったときに、彼女は二度言いかけてはやめた。 今度はカップを置き、その両側に手を平らにした。 「ちょっと変な話をするけど、最後まで全部言うまで何も言わないでほしいの」 隣の部屋のテレビが壁越しに聞こえる。雨は四時から降り続いたまま。 「四月から、あなたがまだ口にしていないことを私が知ってるって瞬間があるの。感情じゃないの、言葉そのもの。あなたの声で、あなたが思った順に。」 冴はカップを四分の一回転させた。続ける気持ちを整えるときの仕草だ。 「最初は高円寺のホーム、雨の中で――疲れてるだけだって思った。でもそれ以来十九回起きて、そのたびにクラブの予算を書いてるノートに全部書き留めたの。開くと現実になる気がして、一週間開いてない。」 彼女は自分の座布団の下からノートを出し、手を置いたままテーブルに置く。 「それを止めることもできる。それをどう話せばいいか…まだ分からなくて。」また手を平らに戻す。「十一日も止めてきたけど、もう疲れたし、こんな大きなこと、あなたに黙って続けるつもりはないの。」 ノートをテーブルの真ん中まで滑らせて、手を離す。
